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[最終更新日]2011/03/28(月曜)

クラウドで実現する停電・防災対策

クラウド・クラウド編集長:江戸達博

情シス、 IT 事業者に求められる停電・防災対策

2011/3/11 に発生した東日本大震災は、未曽有の大規模・広域災害となりました。二次災害も発生する中、記事を執筆している 3/24 時点、情報システム部門や IT 事業者が直近で考えるべき課題ととして以下の 2 点が考えられます。

  1. 計画停電

    東北電力、東京電力の発電所が、地震による被害で機能しなくなり、大幅な電力不足が生じています。14日より同電力管内で、地域を区切り順番に停電を実施する「計画停電」が行われています。

    実際には、多くの企業を抱える東京23区のほとんどが対象区域から外れており、また、計画停電は4月末に解除されることから、影響は一時的かつ限定的に思われています。
    しかしながら、電力使用がピークを迎える夏、そして冬にかけ、23区も広範囲に対象となる可能性が示唆されており、23区内のオフィスやデータセンターも、今後対象となる可能性があります。「4月末まで」とタカをくくらず、少なくとも1年くらいは、何らかの影響を考えておいたほうがよいでしょう。
    情報システム部門やIT事業者としては、東北・関東の停電に備える、あるいは、節電に対応する必要が出てきています。

  2. 震災関連情報提供

    被災地域ではテレビやラジオなどの情報源がなく、また必要とされる情報は地域や状況に応じた、非常に細やかなマスメディアが対応できない情報です。安否情報、ライフラインの情報、避難所、物資支援などを、スピーディに、ネットを通じて、不特定多数の方々に向けて情報発信する必要があります。もちろん、関東近県でもこれらの情報を必要とする人がいます。

    また、生活への影響に関しても、スピーディな情報提供が望まれることも想定されます。

原発問題 放射能/放射線への正しい知識、影響をうけた食品、飲料水…
計画停電 地域、スケジュール、交通情報、店舗の営業情報、電化製品の情報…
燃料不足 ガソリンの供給状況、公共交通機関の情報、物流配送状況…

必要な情報は、実に多岐に渡り、状況が刻一刻と変化する中では、明日、自分の企業が情報提供を求められる当事者になるとも限りません。

付け刃ではなく中長期な視野で対応を

これを踏まえると、所有しているサーバを、堅牢な環境のデータセンターへ移設するのが第一の対策ではないでしょうか。データセンターにはに免震/耐震構造、火災対策、非常用電源等の防災対策が施されています。
この際、ぜひ付け刃ではなく、中長期的な視野で、移設をしてほしいと考えます。同じ移設の手間とコストをかけるのであれば、震災発生での緊急措置ではなく、中期的な防災対策と捉えるのです。

例えば、オフィス近隣のデータセンターにサーバーを避難させるの(移設)も一つの方法です。しかし、防災対策として考えるならば、データセンターがオフィスと同じ被害を受ける環境に置くのは、得策ではありません。データセンターの防災対策がうまく稼働するのか、稼働しつづけられるかは、実際に起きてみなければわからない一面があります。自社と異なる環境を視野にいれたいものです。

御社が 23 区内にあって近々の課題が「計画停電対応」ならば、 23 区内の停電までは数ヶ月の猶予があります。この間に、防災対策として計画を立て、実行しましょう。中長期的な防災対策とする場合は、コストが継続して発生しますから、緊急事態の終了後にコスト的な影響のすくない、あるいは保険として支払える範囲での最小コストに抑えるのが、この計画のポイントです。

本格的なディザスタリカバリソリューションは導入に費用も時間もかかりますが、これからご紹介するのは 0 円から数千円/月でできる対策です。安いのはクラウドを活用しているからです。
しかも、クラウドはマルチテナントといって複数のデータセンターで稼働するので、1つのデータセンターが稼働しなくなっても、他のデータセンターでサービスの継続が可能で、防災対策に適しています。

防災対策案

[対策 1 ]キャッシュサーバの構築

情報提供の主体となった場合、有用な情報として世間に伝わると、サイトへのアクセスが集中し、サービスが停止してしまいます。キャッシュサーバを構築して、アクセスを分散させ、サービスの停止を防ぎます。

rcdn.info
ASP・SaaS に特化した情報サイト。 Web 制作会社の「マーキュリーシスコム」が運営。業界の最新情報の他、サービス検索が充実。

[対策 2 ]Amazon Web Service の利用

クラウドとしてサーバーを提供する Amazon Web Service は、申し込みから 1 時間以内で、サーバなどの設営が可能で、緊急対策として申し分ありません。

データセンターは、アメリカ、ヨーロッパ、シンガポール、そして東京と、世界5箇所にあります。仮想化が施され、データセンター間のサーバー移動も、オンラインによるデータの移行だけで完了します。
ですので、防災対策を見据えるならば、当初はシンガポールにインスタンスを構築し、状況に応じて、東京に展開をする体制で運用します。情勢が落ち着き次第、東京にインスタンスを移し、シンガポールのインスタンスを万が一のために残しておきます。またはすぐに構築可能なようにイメージのコピーを保管して備えます。
コストも従量課金ですから、アクセス、稼働時間、保管容量が少なければ、月に数百円~数千円でバックアップ体制を維持しておくことが可能。まさに保険といえるでしょう。

Amazonのサービスで有用なものをご紹介します。

Amazon EC2
仮想サーバーマシンを提供。ただし、サーバを一から構築する必要があるため、インフラエンジニアでない方がいきなり利用するには敷居が高いかもしれません。その場合は、「 CloudFormation 」を利用すると、簡単に WordPress などのおなじみの構成で、速やかに設置が完了します。
Amazon Route 53
Amazon 提供の DNS サービス。 BIND の設定をそのまま行うことはできませんが、マルチリージョン対応の DNS を構築できます。反映は 60 秒と迅速。
Amazon S3
ストレージサービス。ストレージとしても有用ですが、 S3 自体がウェブサーバとしても利用できることにご注目ください。静的コンテンツであれば、 S3 にアップロードして、公開できる手軽さです。操作もGUIですのでITの専門家でなくても、PDFやJPEG、Excelなどおなじみのデータ形式でドキュメントを作成し、迅速に、情報提供をすることができます。

[対策 3 ]Google Apps の利用

Google Apps は、ウェブやメールの環境をすばやく構築することができます。マルチテナントですから、災害の際も、他のデータセンターからサービスの提供が可能です。また、オンライン環境があればどこからでもアクセス可能。メールやスケジューラーに関してはスマートフォンでも利用できますから、災害時のコミュニケーション手段や在宅勤務環境としても一考に値するサービスです。 Google Apps には無償版と有償版があります。

無償版 ─ Google Apps
1 組織 50 アカウントまで。メール、ウェブサイト、スケジュール、ドキュメントの機能があり、中小規模の組織でグループウェアとして利用できます。無償版でも独自ドメインが利用できますから、企業や組織のサイト運営にも対応します。無償版から有償版への移行もできます。
有償版 ─ Google Apps for Business
1 組織 51 アカウント以上。「─ for Business 」と謳っているだけに、 SLA や 24 時間 365 日のサポートを備えています。 1 ユーザ 6 ,000 円/年の費用がかかりますが、各機能のサーバーを自社で構築・運用管理するコスト、オフィス系のソフトを全クライアントの導入するコストを考慮し、導入する企業や組織も少なくありません。

ここでの注意点は、移行をする場合、既存の社内のセキュリティポリシーと照らし合わせる必要があることです。
例えば、自宅のパソコンやスマートフォンから、社内のファイルサーバーやメールにアクセスできても大丈夫なのか。おそらく多くの企業でセキュリティポリシーの策定に取り組まれたのは、内部統制や個人情報保護法の対策に迫られた 200X 年であろうと思います。策定から数年が経過し、ITの状況や、勤務形態も変わりつつあります。そしてこの未曽有の大災害。この機会に、社内セキュリティポリシーも見直しをお勧めします。

まとめ

  • オフィスのサーバをデータセンターに移設する。
  • 緊急対応ではなく、防災対策として、中長期的な視点で移設計画を立てる。
  • 継続的に、最小のコストで、サービス継続性の高い防災対策環境運用のため、クラウドを活用
  • クラウドの導入に合わせセキュリティポリシーの見なおしを。

以上の防災対策案は、 AWS Japan のページを参考にさせていただきました。 Amazon Web Service のユーザー有志のみなさんが、震災発生直後から迅速な情報提供とITによる支援を続けています。こちらもぜひご一読ください。

この記事をきっかけに、皆様が、クラウドを活用し、付け刃でない戦略的な防災対策に臨まれることを、切に願っています。何かご質問がありましたら、遠慮なくお知らせ下さい。できる範囲でご支援させていただきます。

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