[最終更新日]2010/03/26(金曜)
【第2回】 センス─クラウド・クラウド編集長 江戸達博
クラウドは「センス」で捉える

センス─知識でなく「感覚」を研ぎ澄ます
今日は「センス」についてお話したいと思います。私のおしゃれのこだわりをここで披露したいところなのですが、周囲が止めるので、今日は、クラウドについてのセンスの話に特化してお届けします。
「センス」つまり「感覚」です。クラウドを仕事で取り扱うということは、実態がぼやけているものを相手に仕事をするという、一見リスキーな事態を意味します。クラウドでは、「向こう側」の仕組みがわからなくなっているだけでなく、前回お伝えした通り、「クラウド」という言葉すら、様々に解釈されて、非常にぼやけた存在です。
そのぼやけた仕事を扱うためには、自身の「感覚」を研ぎ澄まして、ぼやけたものを適切に捉えることを、特に意識していかなければなりません。何でも捉えて、取り入れていくという「Sence of Wonder」が必要なのです。
ぼやけたものを捉える上では、上辺だけの知識を重ねて理解しようとしたり、マニアックになることはNG。「本質的にどうなのか?」を常に意識してゆくことが大切です。
ぼやけたものを捉えるには?

新入社員─時に、
クラウド以上に扱いが難しい存在
みなさんの職場にも4月になり、新入社員が入ってきたと思います。新入社員というのも、人によって、評価が違ったり、扱いが難しかったり(笑)、とらえどころのない存在です。
某開発会社勤務PGのAさんの部署に、情報系大学出身のBさんが入ってきたとしましょう。Aさんは上司から、Bさんの教育係を指示されました。「彼は、IT系企業で半年間インターンの経験があるから。よろしく頼むよ」。
Aさんが上辺だけの知識でBさんを理解するとこうなります。「きっと意欲的な人なんだろうな。ITの知識もありそうだ」。ところが現実はそうとも限りません。実はそのインターンシップは授業の一環で受けただけで、Bさんは消極的な人だったなんてこともありうるわけです。更に、IT系といっても仕事は、テレマーケティング会社の書類管理。てっきりプログラミング補助や検証業務などを経験しているのかと思ったのに…。
一方、マニアックな知識で対応してもうまく行かないでしょう。AさんがITスキル標準に詳しくて、エンジニアさんのスキル評価を適切にできても、Bさんのコミュニケーションスキルや態度まではITスキル標準で判断できません。
さて、あなたがAさんならどうしますか?Bさんの行動を見て他の社員や自分と比較したり、雑談を心がけながら発言の背景を捉えたり、上司や同僚から見た彼の評価を聞いたりと、彼を仕事上で「扱う」にあたって、「感覚」をフルに活かして、彼の本質を捉えようと努力すると思います。
クラウドに対してもそのようなスタンスが大事です。実際に自分でクラウドを体感してクラウド以前のシステムと比較したり、新聞や雑誌の記事の裏の背景を捉えたり、周囲の技術者だけでなくいろんな立場の人からの評価を聞いたりと、知識だけでなく「感覚」を研ぎ澄まして本質にアプローチしてはじめて捉えることができるのです。
次のスタンダードを見極める眼はあるか?

Linux サーバの作成手順
かつて、カーネルのコンパイルは必須だった
引用元:IT Pro「13:カーネルのコンパイル」
エンジニアとして、積極的に新しいものを取り入れていく姿勢は大切です。実績があるからと、何年もメンテナンスをされていない技術を使い続けていませんか?周囲から見れば、自分が取り残されているという実績を残しているに過ぎません。その際は、いつも、感覚を研ぎ澄ませて、本質から新しい技術を捉え、取り入れていきたいものです。
ここで問題。「LinuxOSをサーバーにインストールの際、カーネルをコンパイルする必要がある。○か、×か」。答えは、×。「そんなマニアックなことしないよ!」とお思いでしょう。試しに、先輩に聞いてみてください。もしかしたら30代以上は○と答えるかもしれません。実は昔はカーネルのコンパイルは定石だったのです。今日ではディストリビューションが進化したので、実務上、コンパイルして作りこむ必要はなくなりました。
クラウドの世界でも思い返せば、Google App Engineが2008年4月にリリースしたとき、対応していた言語はPythonのみでした。Javaに対応したのは2009年4月。Pythonをかじっていた技術者は、1年も早く触れられたわけで、日本でクラウドのブームが来る前から、先行者利益を得られるチャンスがあったのです。無論、Javaは英語のようにベーシックに抑えておくべき言語の一つでメンテナンスも適切にされていますが、新しい技術をキャッチアップすることの重要性を感じていただける例だと思います。
仮想OSも、少し前まではVMwareにシフトしていましたが、今後はKVMが新しい潮流になると思います。既に採用するIaaS事業者も現れています。
クラウドは特に、明示的な旗振り役がいるわけではありません。次から次にサービスが立ち上がる中で、エンジニアは感覚で新しい技術を捉え、メインストリームになる技術を嗅ぎ分けていくたくましさが必要です。
では最後に質問です。お客様から「クラウドってどうですか?」と聞かれたときの答えとして、CさんとDさん、どちらの技術者が信用できますか?
- C:
- 「クラウドというのは、ITの所有から利用への変化といわれていて、ITに大きなインパクトをもたらしています。今後3年で3倍になる市場といわれています。仮想化技術が技術基盤なのですが、ちなみに仮想化技術にはXenとかHyper-Vとかがあります。クラウドには、マルチテナントで、従量課金といった特徴があります。IT技術者の作業負荷の削減にもつながるので、御社の本支店間のサーバーをクラウドで統合して、コスト削減につなげませんか?Amazon EC2とか、ホワイトクラウド、ニフティクラウドがパブリッククラウドの選択肢としてあげられるのですが、ちょっとセキュリティが心配なので、プライベートクラウドがオススメですね。イントラネットみたいな感じです。SIerとかデータセンター事業者が手がけています。だいたい3割ぐらいコスト削減できるという話ですね」
- D:
- 「御社の場合は、本支店間で、リアルタイムで販売データのやりとりをしています。クラウドは場所に関係なくアクセスできますから、もう店舗ごとにサーバーを設置しなくてもよいのです。各店舗のPOSからネットワーク経由で販売データを集めて、クラウド上のサーバーで処理させればよいので、シンプルな構成にできますよ。またクラウドは冗長性がありますから、システムの信頼性も高いのです。御社では、店舗のスクラップアンドビルドをスピーディにされているので、インフラ構築期間が断然短いという点もオススメできる点です。ただし、データの欠損のリスクが大きいので、稼働中のバックアップサーバーは活かして、オンラインバックアップを取ってはどうでしょうか。また、回線上の盗聴に備え、VPN接続に対応したサービスを選定しましょう。…」
「感覚」を駆使して、本質から理解すれば、掴みどころの無い雲も、うまく乗りこなせるようになってきます。
振り返り
トレーニング
クラウドの本質は何だと思いますか?
- 「仮想化」「コスト削減」といった表面上のキーワードを使わないで考えてみてください。
参考記事
- Google App Engine for Javaのフレームワーク「Slim3」の作者ひがやすを 氏は、自身のブログにおける2010年3月19日のエントリー『App Engineではどの言語を使えばいいのか?』で、pythonを薦めています。
関連用語
- 仮想化
- Google App Engine
- Python








